先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして吉例顔見世大歌舞伎の第一部・第二部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。
昨日の悲しい気持ちがいまだ続いておりますけれども、舞台は日々役者さんたちの命と共に生きて動いているのだなとつくづく思います。
身替座禅が最高すぎる
第一部は「蜘蛛の絲宿直噺」
源頼光の土蜘蛛退治を題材とした華やかな変化舞踊であります。人気者の猿之助さんの五役早替わりとあって、平日でしたが客席はいつにも増してにぎわっていたように思います。
セリフ中に新型コロナ関連ワードが随所に散りばめられていたのも愉快で、客席のそこここから笑い声が聞こえ、いかにも歌舞伎の舞台らしくうれしくなりました。感染拡大の緊張感で街の気配がぴりぴりしつつありますから、こうした計らいに救われます。
猿之助さんの五役早替わりは想像の通りに見事であり、個人的には太鼓持ちのくだりをおもしろく拝見いたしました。傾城薄雲の色っぽさと正体の気迫にも圧倒されました。
第二部は「身替座禅」
今月は菊五郎さんの右京に左團次さんの奥方玉の井という配役で、大好きなコンビを今月も拝見できることが幸せすぎて大興奮いたしました!!
女性の身では許しがたいはずの浮気帰りの右京がなぜにあんなにも可愛らしく見えるのか、恐妻の奥方玉の井が嫉妬と怒りでわーんと泣くのをみるとなぜに泣きたいくらい可愛らしく見えるのか、いつもとても不思議に思いますが、そこが役者さんの芸の素晴らしさなのだろうなあと感動してしまいます。
左團次さんは昨日80歳になられたとのことで、そのお若さに驚きいるばかりです!!いつまでもお元気で活躍なさるお姿を拝見していたいなあと切に願っております。
先日、ちょうど鬼滅の刃×歌舞伎ノ館に関連して「頼光・四天王」の世界について考えていたところでしたので、
「蜘蛛の絲宿直噺」はとてもタイムリーで、妖怪変化というのは人々にとって一体なんだったのか考えさせられた芝居見物でもありました。
古代から現代にかけて日本人は、さまざまな悲しみを怪異としてエンタメ化したりして昇華させつつ、どこかでうしろめたさを感じながら怖れてきたのでしょうか…なんとも興味深い性質であるなと思われます。
歌舞伎ノ館へお出かけの方には歌舞伎座「蜘蛛の絲宿直噺」もオススメです!