歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい義経千本桜 渡海屋・大物浦 その五 義経千本桜のおさらい

ただいま歌舞伎座で上演されている二月大歌舞伎

第二部「義経千本桜 渡海屋・大物浦」は、片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候と銘打たれている舞台です。これはつまり仁左衛門さんが、主役の新中納言知盛の演じ納めをなさるという意味であります。もう二度と見ることのできない大変貴重な舞台です。

この演目については以前にもお話したものがいくつかありますが、この機会に改めてお話してみたいと思います。芝居見物や配信のお役に立つことができれば幸いです。

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義経千本桜のおさらい

義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)は、「義経記」や「平家物語」などの古典作品と、その影響で生まれた謡曲などを題材とした演目です。

延享4年(1747)11月、大坂は竹本座にて人形浄瑠璃として初演されました。当時の人形浄瑠璃において大ヒットを連発していた竹田出雲・三好松洛・並木千柳の合作によるものです。

当時は人形浄瑠璃のヒット作を歌舞伎化するという流れがよくあり、義経千本桜も翌年の延享5年1月に伊勢の芝居で歌舞伎として上演されています。5月には江戸の中村座でも上演されていますので、大坂から江戸まで急速に伝わる一大ヒット作であったことが伺えます。

 

ざっくりといえば「壇ノ浦で義経に滅ぼされた平家のさむらい達が実は生きていて、兄頼朝に追われる身となった義経への復讐を誓う(が、叶わない)」という内容。これを、壮大な悲劇、親子の情愛などなど様々なテイストの名場面で描いていきます。

・栄華の極みから凋落し西海に散った平家

・才を持ちながら流転の身となった義経

この二つの悲しみ、世の中のままならなさは、江戸時代の人ばかりでなく現代人の感情をも突き動かすように思います。

 

実は義経千本桜の主人公は源義経ではありません。そのうえ全体で3人もいます。

主役

①渡海屋・大物浦…新中納言知盛(時代)

②すし屋…いがみの権太(世話)

③道行初音旅・川連法眼館…佐藤四郎兵衛忠信実は源九郎狐(舞踊・動物)

時代とは、江戸時代当時の時代劇。世話とは、江戸時代当時の現代ドラマといったところです。それぞれに求められている芸の味わいが全く異なりますので、立役の方にとって特に重要な作品とされています。

 

全五段ある義経千本桜のうち、渡海屋・大物浦(とかいや・だいもつのうら)の場面は、二段目の中・切にあたります。舞台は壇ノ浦に滅んだ平家の運命を感じさせる荒涼とした海辺です。

簡単な内容としては、

①幼い安徳天皇を守りながら廻船問屋の主人に身をやつして生きてきた平知盛が、ついに義経を襲うチャンスを得るのだが、

②憎き義経の命を奪うことはできず敗れ、

③安徳天皇は義経に託されることになり、

④入水して果てる

というもの。血みどろになった知盛が、碇を巻き付けて海へと飛び込んでいく入水のシーンは壮絶かつ美しく、あまりにも悲しい名場面です。

次回からは詳しい内容についてお話していきたいと思います!

 

参考文献:新版歌舞伎事典/歌舞伎手帖/国立劇場上演資料集649

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