先日から、先月末に開催された第39回 俳優祭の感想をしたためております。俳優祭というのは数年に一度開催される俳優協会のお楽しみイベントで、協会の資金集めを主な目的としています。模擬店で俳優さんと間近に接することができたり、この日限りのおもしろい演目が上演されたりと、大変に盛り上がるイベントです。
第39回俳優祭の思い出② 於:国立劇場大劇場
今回の俳優祭は、
一、菅原伝授手習鑑 加茂堤・車引
二、お楽しみ模擬店
三、映像でふりかえる初代国立劇場の思い出
四、戯場八景名残隼(ゆめのくにへようこそありがとうこくりつ)
というプログラムで開催されました。
怒涛のお楽しみ模擬店が終わり、映像コーナーに。こちらは初代国立劇場の開場時から現在に至るまでの名舞台を貴重な記録映像で紹介するというものです。初回公演の孝夫時代の仁左衛門さんが麗しすぎていきなり昇天しそうでした。そのほかたまらないラインナップで、終始興奮しながら拝見いたしました。
吉右衛門さんや三津五郎さんなどなど、記憶に新しく懐かしいお顔触れもありました。映像とは知りながら、つい固唾を飲んで芝居の行方を見守ってしまうのが、名優の力なのだろうと思います。客席でも、芝居の良き所でワーッと拍手が起こるシーンが何度かありました。劇場に沁み込んだ思い出の数々が昇華されていくようなとても良い時間で、じーんと胸が熱くなりました。
記録映像はいいですね。大好きです。国立劇場に収蔵されている膨大な記録映像は、今後どうなるのでしょう。建て替え中、現在のような視聴室の設置は難しいと思われますが、長い期間ですからなんらかの形で拝見できる機会があるとありがたいですね。
続くお楽しみ演目の「戯場八景名残隼(ゆめのくにへようこそありがとうこくりつ)」
こちらはテレビで放送される可能性もありますので、詳しいことは書きませんけれども、笑いはもちろん盛りだくさんでありました!
そればかりでなく、国立劇場の素晴らしい舞台機構を最後に存分に見せてくださった演出だったなあと感じました。3階席の一番後方から拝見していても舞台の奥の方まで一枚の絵のようによく見えるのですよね。
フィナーレの挨拶ではなんと、仁左衛門さんがお出ましになりました!爽やかな和装姿で…。拝見できないと思っていたので狂喜してしまいました。
マイクの前に立たれてしばらく、お隣の梅玉さんに助けを求めるようにごにょごにょとなさっていたので、どうなさったのかな?と思ったら…
「僭越という言葉が出てこなかったんや(ニュアンス)」とおっしゃり。テへへ、というような雰囲気でニッコリ微笑まれたので、あまりの可愛らしさに全ての記憶が一瞬吹っ飛びました。客席もドッと盛り上がり、幸福感に包まれての終演。本当に良い時間でした。
今回の俳優祭開催は、時節的にも大変なご苦労があったものと思われます。それでも開催を実現し、皆様総出で我々観客を楽しませてくださったことへの感謝の思いでいっぱいです。僅かな額になってしまいましたが、使ったお金が直接何かのお役に立つのであればこのようにうれしいことはありません。次回もぜひ伺うことができますように。