めっきりと冬の寒さですけれども、皆さまいかがお過ごしでしょうか。またしても気温が上がりつつあるそうですので、体調を崩されませんようお気をつけくださいませ。
このすえひろはといえば、先日東京ドームで行われたアジアプロ野球チャンピオンシップを観戦し、白熱のひとときを過ごしたところです。国際試合というものを初めて体験いたしましたが、格別の一体感が感動的でした。
さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして、吉例顔見世大歌舞伎の昼の部「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためたいと思います。
芝のぶさんがすごすぎる
吉例顔見世大歌舞伎昼の部は「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」です。2017年に歌舞伎座で上演され好評を博した作品の再演でした。
古代インドの神話的叙事詩「マハーバーラタ」を題材とた作品であります。神々が戦を繰り返す人の世に介入し、その行方を見守るというスタイルの物語で、2017年の初演当時も何だこれはととても衝撃を受けたことを覚えています。
終始美術品のように非現実的な世界が展開していくのですが、こうした壮大すぎる世界観を違和感なく舞台の上に表現し、またそれに負けない肉体表現を持っているのはやはり歌舞伎なのだろうと思いました。菊之助さんの新作歌舞伎の題材を選ぶ感覚は本当に素晴らしいですね。
まだ言語化できずにいるのですが、マハーバーラタには日本の古典とは何か根本的に違う価値観が根底にあるように思われて、何度拝見しても癖になるような味わい深さがあります。ガンジス川のように、自分が来ていつか帰る場所を具体的にイメージできる文化のもとで生まれた物語というのは、一つの確固たるループを持っているのかもしれません。
セリフのひとつひとつが示唆に富み、人生の折に触れ見返したいような作品です。今月は定額制サービスを利用しておりまして、もう一度拝見したいなあと思っているところです。千穐楽が近いですが、ぜひ出かけたいと思います。
舞台のなかでも強烈に印象に残っているのは、芝のぶさんの鶴妖朶王女です。ご覧になった多くの方がそう思われているのではないでしょうか。とにかく圧倒されました。
お顔立ちと姿かたちがお美しい、お声が綺麗、という表面的な素晴らしさも猛烈でありながら、言葉の裏に潜んでいる情念と悲哀、99人の兄弟をおいて君臨する気高さと爆発的生命力に満ちていました。凄まじかったですね。これからもぜひ大きな役どころで芝のぶさんのお芝居を拝見したいです。
また、先月の国立劇場を休演されていて大変心配していた菊五郎さんのお元気なお姿を拝見できたのも大変喜ばしいことでした。菊之助さん丑之助さんとの三世代でのご共演を拝見できるというのは本当に幸せですね。お加減が気がかりですが、ご無理のない範囲で長くご活躍いただきたいなと願うばかりです。