ただいま歌舞伎座にて上演中の芸術祭十月大歌舞伎から夜の部「熊谷陣屋(くまがいじんや)」のお話をしてきましたが、今回でひとまず締めくくりたいと思います。
幕切れに違いあり
歌舞伎の熊谷陣屋は文楽「一谷嫩軍記」熊谷陣屋の段が元になっているというお話はその一でいたしました!
原作に忠実なのかな?と思いきや、実は歌舞伎と文楽では幕切れの演出が違うのです。
歌舞伎バージョン
まず歌舞伎では幕が引かれた後、熊谷がひとり花道で泣き崩れ、熊谷役者の悲壮の表現にスポットを当てる團十郎型と呼ばれる演出法が主流です。
文楽バージョン
一方原作である文楽では、幕切れのときまで熊谷は舞台にとどまります!場面の登場人物がずらりと揃い、物語そのものにスポットを当てる演出がなされています。
今月は…
今月の「熊谷陣屋」はといえば、文楽の演出法を取り入れた芝翫型で演じられるということです。
熊谷と相模が本舞台にとどまり、屋体の中央に義経、下に弥陀六という配置で見得をして幕になるという四代目芝翫考案の型であります。衣裳も文楽に近いものが取り入れられているということです。
なんでも、芝翫が芝翫型の熊谷陣屋を歌舞伎座で演じるのはこれが初めてということです。
先代から数代前までの芝翫は女形でしたから、立役の芝翫の襲名披露としてこれ以上ない記念すべき演目なんだなぁと思うとなんだか興奮してまいります…!!
制札の見得
敦盛の首実検の際、首桶の中の小次郎の首を見てワッと取り乱して駆け寄った相模と藤の局を、熊谷が桜の制札を使ってぐっと押さえるという場面があります。
熊谷が桜の制札を持ち、迫力たっぷりにバッタリと見得をする部分は「制札の見得」と呼ばれ、熊谷陣屋の大きな見どころのひとつです。
ここでも團十郎型と芝翫型に違いがあります!
團十郎型
軸を上に、制札を逆さまにして見得
芝翫型
制札を上に、軸を下について見得
今月の熊谷陣屋は見逃せません!
まだまだ上演中の八代目中村芝翫襲名披露 芸術祭十月大歌舞伎
熊谷陣屋の幕見券は17:45発売、1400円です!
貴重な一幕にどうぞお出かけください。