歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい御摂勧進帳 その一 芋洗い勧進帳

ただいま歌舞伎座で上演中の

芸術祭十月大歌舞伎

昼の部「御摂勧進帳」は、先月上演されていた「勧進帳」と

深いゆかりのある演目ですので少しばかりお話してみます。

何らかのお役に立てればうれしく思います!

「芋洗い勧進帳」と呼ばれています

御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)は、

1772年(安永2年)に江戸は中村座にて初演された演目であります。

 

江戸の歌舞伎界では毎年11月を一年契約のはじまりとして

「今年はこんな役者を取り揃えましたよ」とお客たちに知らせるための

顔見世なる興行行事が行われており、その狂言立てには守るべき約束事がいくつもありました。

顔見世で上演される演目は「顔見世狂言」と呼ばれており、

隈取をしたド派手なスーパーヒーローが大活躍する場面を含むことがお約束のひとつです。

この御摂勧進帳も、そんな顔見世狂言のひとつであります。

 

御摂勧進帳は俗に「芋洗い勧進帳」とも呼ばれております。

この名前は弁慶がスパスパスパッと斬り落とした兵卒たちの首を、巨大な水桶にごろごろと入れ、

金剛杖でもってざんぶざんぶとかき混ぜる場面から来ているようです。

 

こう書きますともはやスプラッター映画のごときドン引き残酷絵巻なのですが、

舞台の上ではそのようなシリアスさというものは一切ありませんで、

実にほのぼのと、おもしろおかしく描かれます。

これが真面目にならずにおもしろく見える、おおらかに楽しめる、ということこそが

超人が大暴れするさまを漫画のごとく大げさに表現する

荒事(あらごと)」と呼ばれる演出の魅力なのではないかなあと思います。

 

江戸時代の人々は荒事を楽しむと同時に、

疫病や災いを払ってくれるようなありがたみも感じていたようですので、

「芋洗い」は一年のはじまりである顔見世狂言にはうってつけであったようです。

 

そんなおおらかでほのぼのとして「御摂勧進帳」は

数ある歌舞伎の演目の中で最も緊迫感のあるドラマのひとつである「勧進帳」と

深いゆかりがありますので、次回にお話したいと思います。

 

参考文献:新版歌舞伎事典/百科事典マイペディア/日本大百科全書(ニッポニカ)

新版 歌舞伎事典

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