近ごろは落語・講談の「中村仲蔵」を聞き比べるのを楽しみにしてまいりました。
いくらなんでもこんなに一気に同じ噺を聞きまくるということはなかなかありませんで、時間があるからこその楽しみであります。
それぞれの名人によって、仲蔵のエピソードのどこに重きを置くかということが微妙に異なっているように感じられることが面白かったです。
味わいはそれぞれに異なりましたが、やはり「中村仲蔵」は胸が熱くなると同時に元気ももらえる素晴らしい噺であるなということを痛感いたしました…最高です。
そんななかでやはり仲蔵の姿を見たいなあと思いましたので、大好きな書籍「忠臣蔵ー五段目 斧定九郎」を開いてお気に入りの一枚を眺めてみました。
勝川春章「東扇 初代中村仲蔵の斧定九郎」
出典:平木浮世絵美術館「忠臣蔵ー五段目 斧定九郎」
勝川派の祖であり役者絵に革命を起こした勝川春章の1776年の作品であります。
この「東扇」は見てもわかるように、切り抜いて扇の骨に貼って扇子を作ったり、ふすまなどにシールのように貼ったりして日常を彩る印刷物であったようです。
勝川春章は役者の似顔絵でこういった「東扇」を18図作成していたそうであります。いまでいうアイドルグッズのような存在だったのでしょうか。
絵に描かれている仲蔵は1776年5月中村座の「仮名手本忠臣蔵」で、四回目に定九郎を演じた時の姿だそうです。
この時の上演ではなんと主役の大星由良助も勤めていたそうですから、定九郎の工夫を経てみるみるうちに大出世したことがわかりますね…!
それでもなお定九郎の姿が東扇になっているということは、これが売れ筋であったわけで、いかに愛されていたかがわかり胸が熱くなります。
胸筋や腕の筋が盛り盛りの仲蔵、生で見たらさぞかしカッコよかったことでしょう…この顔つきもたまらないですね。
あああ江戸時代に行きたくなってきました…技術が進歩しタイムトラベルができるようになったらばぜひとも1776年の5月中村座を希望したいものです。