ただいま歌舞伎座で上演中の團菊祭五月大歌舞伎
團菊祭とは、明治時代に活躍した名優・九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎の功績を讃えるためのお祭りです。團十郎家、菊五郎家に縁ある方々が揃って、ゆかりの演目を上演します。
昼の部「歌舞伎十八番の内 毛抜」は、市川團十郎家に伝わる家の芸「歌舞伎十八番」のうちのひとつであり、荒唐無稽であるもののおおらかでユーモラスな名場面です。
今回の上演は四世市川左團次一年祭追善狂言と銘打たれ、そのとおり昨年亡くなられた左團次さんの追善として上演されています。左團次さんが当たり役とされていた主役の粂寺弾正をご子息の男女蔵さんが、ヒロイン的役柄の錦の前を、お孫さんの男寅さんがお勤めです。さらに團十郎さんが後見としてご出演というレアな配役でもあります!
そんな「歌舞伎十八番の内 毛抜」については、過去にお話ししたものがいくつかございますので、ここに一つまとめたいと思います。何らかのお役に立てれば幸いです。
そもそも歌舞伎十八番の内 毛抜とは
歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)とは、1742年(寛保2)に大坂の佐渡嶋座で上演された「雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)」の一幕です。市川團十郎家に大変ゆかりが深く、家の芸「歌舞伎十八番」に制定されています。
毛抜というのは、あの日用雑貨の毛抜きです。細かな毛をつまんで抜くことができる金属製のあの毛抜きであります。毛抜をきっかけにあるトリックを見抜き、お家騒動を解決するという奇想天外なお話です。昔の人の考えることは本当に突き抜けているなと思わされる、理屈抜きのおおらかさが魅力です。
簡単なあらすじ
あらすじについてごく簡単にご紹介したのがこちらの回です。
粂寺弾正という役どころ
粂寺弾正という役は、数ある歌舞伎の役柄の中でも独特の魅力を放っています。市川團十郎家の家の芸と言えばスーパーヒーローの「荒事」なのですが、それとはまた違ったおおらかさが求められます。舞台上でいわゆるセクハラ的なことをしても不快感を与えない、愛嬌と品性が欠かせません。その点で左團次さんは本当に素晴らしい、この上ない粂寺弾正だったなあと思います。機会がありましたらぜひ映像をご覧になってみてくださいませ。
江戸のサイエンスミステリー
科学的な謎解きドラマというものは現代でも人気がありますよね。ガリレオや科捜研の女といったところでしょうか。江戸時代の人々にとっては磁石も科学的で不思議なものであったそうです。そんなお話をしたのがこちらの回です。