まもなく京都の祇園四条は南座で上演される京の年中行事 當る卯歳 吉例顔見世興行
京都の年末の風物詩である吉例顔見世興行。南座の玄関が役者さんの名前を書いたまねきで彩られ、祇園の街がにぎわいます。
第三部「女殺油地獄」は、近松門左衛門の名作。「金が欲しくてやった。今は反省している」とニュースで流れるような、非行少年による殺人事件を描いたリアリティのあるドラマです。若者の心のもろさは現代にも通ずる恐ろしさがあり、江戸時代にこのような物語を作った近松の洞察力に驚き入ります。
今回は主役の河内屋与兵衛を愛之助さんが、被害者となるお吉さんを孝太郎さんお勤めになります。孝太郎さんのブログによると油まみれになる殺しのシーンは大変寒いそうですから、どうぞご無事で千穐楽までお勤めになれますよう祈っています。
そんな「女殺油地獄」についてはこちらのブログでも過去にお話ししたものがございます。古くて稚拙なものも含まれますが、何らかのお役に立つことができれば幸いです。
女殺油地獄とは
女殺油地獄(おんなころし あぶらのじごく)は1721年(享保6)に大坂の竹本座で人形浄瑠璃として上演された近松門左衛門の作品。その後江戸期にはほとんど上演されることなく、1909年(明治42)に大阪の朝日座で歌舞伎として上演された演目です。
上方の名優たちが、歌舞伎や映画でお勤めになったゆかりの深い演目であり、大切に伝承されているものです。特にセンセーショナルな名場面として知られているのが油まみれになっての殺しのシーンです。フィクションだと承知していながら、息を潜めて見てしまうような恐ろしさがあります。
商人のお金が行き交う「節季」
江戸時代の商習慣「節季」がお話のキーポイントになっています。江戸時代の大坂は商人の街であり、彼らにとって業務上重要なタイミングで起こった事件です。
一大イベント野崎まいり
加えて、江戸時代の大坂商人たちにとっての格別なイベントであった「野崎まいり」のタイミングで起こった事件であるのもキーポイントです。
受け継がれる芸
1909年に歌舞伎で上演された際、与兵衛を勤めた二代目實川延若。その長男である三代目實川延若より直伝の与兵衛を、仁左衛門さんが愛之助さんに伝えています。2022年の今もこの演目が上演されているのは大変重みのあることだと思います。
義太夫狂言とは
「女殺油地獄」は、義太夫という浄瑠璃に乗って展開していく物語です。こういった演目は義太夫狂言と呼ばれていて、特別な演出で上演されます。
義太夫狂言の特徴や、代表的な演目、おすすめのサイト・書籍などについて3回に分けてお話いたしました。他の演目をご覧になる際にも役立つかと思いますので、ぜひご一読ください。