ただいま歌舞伎座で上演中の六月大歌舞伎
昼の部、夜の部ともに古典の名作演目が並んでいて盛りだくさんの内容です。古典歌舞伎に興味をお持ちの方には、ぜひにとおすすめしたく思います。
夜の部で上演されている「義経千本桜 木の実・小金吾討死・すし屋」は、三大狂言の一つに数えられる名作です。一言でいうと、壇ノ浦で滅びたはずの平家の武将・平維盛をかくまうおすし屋さん一家の物語。維盛をめぐり、ドラ息子いがみの権太と父弥左衛門の間に起こる悲劇を描きます。
今回はいがみの権太を仁左衛門さんがお勤めになっています。いがみの権太の演じ方にはざっくり江戸と上方の2パターンあるのですが、仁左衛門さんは上方よりの唯一無二のスタイルでお勤めになります。江戸の権太とはかなり異なるのですが、ご覧になると物語全体の味わいがより鮮明になるのではないかと思います。
以前こちらのブログで簡単にお話したものがございますので、ここにひとつまとめてみます。芝居見物など何らかのお役に立つことができれば幸いです。
義経千本桜 すし屋とは
義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)は、「壇ノ浦で義経に滅ぼされた平家のさむらい達が実は生きていて、兄頼朝に追われる身となった義経への復讐を誓う(が、叶わない)」という内容を、壮大な悲劇、親子の情愛などなど様々なテイストの名場面で描いていく演目です。
そのうちすし屋は、実は生きていた平維盛を匿ったことから歯車が狂い始める町人の家庭のお話です。簡単な内容としては、
①すし屋を営む弥助の家で、従業員として匿われている平維盛。弥助は維盛を助けたく、遭遇した小金吾という青年の遺体の首を身代わりとして取る。
②弥助のすし屋に、鎌倉方の梶原景時が、維盛の首の詮議のために訪れる。
③弥助には権太という勘当されたドラ息子がいた。権太は金ほしさに維盛を首にし、維盛の妻子ともども梶原へと差し出してしまう。
⑤あまりの怒りから、権太を刃物で刺してしまう弥助。実は、権太は父弥助の計画に気づいていた。そして小金吾の首とともに、自らの妻子を維盛の妻子と偽って差し出していた。果たしてその理由とは…
というものです。悪い人間だと思われた人物から明かされる、本音の悲しさがみどころです。
義経千本桜のおさらい
まずは義経千本桜の全体像について簡単にご紹介いたします。別のプログラムもご覧になる方は、全体でいうとどのあたりのお話なのか把握しておくとよりおもしろいかもしれません。もちろん、単独でご覧になっても充分おもしろいお話です!
あらすじ
舞台の上で起こることとその事情などについてお話したのがこちらの回です。
そもそもの前提からお話しておりますので長くなってしまっています。お芝居をご覧になった後でもお役に立てるかと思いますので、よろしければご一読くださいませ。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」とのゆかり
義経千本桜は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも描かれていた源平合戦ゆかりの物語。平維盛はドラマ本編にも少しばかり登場していました。それにちなみまして、つらつらと演目のご紹介をしたのがこちらの回です。