ただいま浅草公会堂で上演中の新春浅草歌舞伎
若手の花形役者の方々によるお正月の恒例公演で、古典の名作演目の大役を教わる若手の登竜門的公演です。大切な古典演目の貴重な伝承機会でもあります。ここ10年ほどは松也さんを中心とする世代の方々がご出演でしたが、今回で浅草歌舞伎を卒業し次世代へバトンタッチされると発表されています。第一部・第二部ともに魅力的な演目が並び、まさに集大成といえる公演ですので、ぜひにとおすすめいたします。
第二部で上演されている「一谷嫩軍記 熊谷陣屋」は、時代物と呼ばれるジャンルの名作ドラマです。すべてをかけて己の責務を全うせんとする男と、その家族の悲劇が描かれます。時代物というのは江戸時代における時代劇といったところです。難解なところもありますが、深く練り上げられた演出と重みのある心理描写、歌舞伎ならではのスタイルの美しさなどなど魅力で溢れています。
この演目については過去の上演の際にお話したものがいくつかありますので、ひとつまとめたいと思います。何らかのお役に立てれば幸いです。
そもそも熊谷陣屋とは
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)は、源平合戦の世を舞台にした物語。 中でも屈指の名場面とされる「 熊谷陣屋(くまがいじんや)」を単独で上演することの多い演目です。
「一枝を伐らば一指を切るべし」というメッセージを主君・義経から託された熊谷次郎直実というさむらいが、このメッセージを「後白河法皇の子である敦盛を守るために一子を斬るべし」と解釈。忠義のため大切な我が子を失い、仏の道を選ぶという戦の世の悲劇であります。
ざっくりとしたあらすじ
いきなりご覧になると少し複雑かもしれませんので、まずは「熊谷陣屋」のあらすじをご紹介いたします。
お話のルーツ「敦盛最期」
演目の元ネタとしている平家物語の「敦盛最期」の内容をお話したのがこちらの回です。古典の授業で習ったような習っていないようなお話ですが、大人になってから噛みしめてみますと悲しみがより深く染み入るように思われます。
相模と藤の方
「熊谷陣屋」における女形の重要な役どころ2つについてのお話、今月は相模を孝太郎さんが藤の方を門之助さんがお勤めです。熊谷陣屋において悲しんでいるのは直実だけではありませんで、恋をして長年連れ添い我が子を育てた夫婦の物語でもあります。
弥平兵衛宗清、待て
いきなり出現するおじいさんの秘密についてお話した回です。初見の際、割とナゾな存在ではないでしょうか。
一枝を伐らば一指を切るべし
物語の重要アイテムである「一枝を伐らば一指を切るべし」の制札は神戸に実在していまして、それについてお話したのがこちらの回です。
歌舞伎のお約束「物語」
熊谷陣屋の場面にも登場する「物語」という歌舞伎用語についてお話したのがこちらの回です。他の演目でもしばしば登場するものですので、芝居見物のお役に立つかと思います!
浄瑠璃絵づくしの「一谷嫩軍記」
こちらは江戸時代の出版物の画像の中で発見した「一谷嫩軍記」です。
マニアックになってしまいますがもしご興味お持ちでしたらご一読ください。