ただいま浅草公会堂で上演中の新春浅草歌舞伎
若手の花形役者の方々によるお正月の恒例公演で、古典の名作演目の大役を教わる若手の登竜門的公演です。大切な古典演目の貴重な伝承機会でもあります。ここ10年ほどは松也さんを中心とする世代の方々がご出演でしたが、今回で浅草歌舞伎を卒業し次世代へバトンタッチされると発表されています。第一部・第二部ともに魅力的な演目が並び、まさに集大成といえる公演ですので、ぜひにとおすすめいたします。
第一部で上演されている「与話情浮名横櫛 源氏店」は、世話物と呼ばれるジャンルの名作ラブストーリーです。世話物というのは江戸時代における現代ドラマといったところで、セリフが聞き取りやすく内容も比較的わかりやすいことが特徴です。
今回はの新春浅草歌舞伎では、隼人さんと米吉さんが主役の与三郎とお富をお勤めになります。お二人はおそらく役の実年齢に近いと思われ、浅草での共演も重ね、役者の成長度と役柄の実年齢の座標がちょうどよく合致する魅力あるタイミングではないかと思います。次がいつかはわかりません。古典演目はいつでも見られるように感じられますが、ここぞという良きタイミングに巡り合うチャンスはなかなかないものです。
この演目については過去の上演の際にお話したものがいくつかありますので、ひとつまとめたいと思います。何らかのお役に立てれば幸いです。
そもそも与話情浮名横櫛とは
与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)は、1853年(嘉永6)1月 江戸・中村座で初演された、三代目瀬川如皐作のお芝居です。
商家の若旦那・与三郎が、土地で幅をきかせている危険な筋の男 赤間源左衛門の女 お富といい仲になったために、取り巻きから体中を刃物でズタズタに傷つけられてならず者となるのだが、数年後お富と再会してしまい…というハードなラブストーリーであります。
与三郎が刃物で切りつけられて傷だらけになるのでそのまま「切られ与三」の通称でも知られています。痛そうです。「切られお富」という派生バージョンも存在しますので、機会があればぜひこちらもご覧くださいませ。
ざっくりとしたあらすじ
物語は「木更津海岸見染の場」「赤間別荘の場」「源氏店の場」の三つの場面で描かれ、今回は「源氏店」のみが上演されます。
見染の場から源氏店までの簡単なあらすじを5回に分けてご紹介したのがこちらです。過去二人の間にいったい何が起こったのかを、念頭に置いてご覧にになりますと、より楽しめるのではないかと思います。上演のタイミングや配役などによって、内容が前後したり変わったりする場合がありますのでご容赦願います。
ちょっと詳しいあらすじ
より詳しくあらすじを調べたい方はこちらのまとめ記事をご利用ください。
歌舞伎の重要アイテム「臍の緒書」とは
歌舞伎の演目で、実は肉親であった…!という事実を伝える重要アイテムとして「臍の緒書(ほぞのおがき)」というものが登場します。具体的には一体どういったものなのかよくわからないままでしたので、調べてみたのがこちらの回です。
「いやさお富、久しぶりだなァ」
切られ与三といえばこれ!という名台詞をご紹介した回です。名作演目の名セリフは、さまざまな役者さんのものを聞き比べるのもお楽しみのひとつですね。ぜひ映像や劇場などで、さまざまな配役の上演に触れてみてくださいませ。www.suehiroya-suehiro.com
まさかの実話
テレビドラマ顔負けの展開が繰り広げられる「与話情浮名横櫛」、信じがたいことに実話が元ネタになっています。あくまでもを噂が噂を呼んだ結果仕上がった実話ですので、事実とは言い難いものですけれども、興味深い話ですのでぜひご一読ください。
初演の与三郎 八代目團十郎
江戸から続く人気演目は、初演の役者を調べてみると、より役柄の見え方に奥行きが生まれておもしろくなるように感じています。初演で与三郎をお勤めになった八代目團十郎についてお話したのがこちらの回です。演目の内容とは直接関係ありませんが、もしご興味をお持ちでしたらどうぞ…