ただいま歌舞伎座で上演中の六月大歌舞伎!
第二部で上演されている「桜姫東文章 下の巻」は、四月に仁左衛門さんと玉三郎さんによる共演で上演され大きな話題を呼んだ「上の巻」の続きで完結編です。
お二人の共演による「桜姫東文章」は、かつて社会現象を起こした伝説の舞台として知られ、実に36年ぶりの上演であります。このすえひろもこの目で拝見できるとは夢にも思っておりませんでしたから、まさかまさかの実現に熱狂しています。
四月の上演の折にお話したものがいくつかありますので、ひとつまとめたいと思います。何らかのお役に立てれば幸いです。
そもそも桜姫東文章とは
桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)は、大南北と呼ばれた江戸の鬼才・四世鶴屋南北の代表的な作品の一つです。初演は文化14年(1817年)、当時の人気女形五代目岩井半四郎が桜姫を勤めました。
一言で申せば、愛した稚児を失った高僧・清玄と、自らを犯した釣鐘権助に惚れたお姫様・桜姫が、因果の渦に飲み込まれ転がり落ちていく物語であります。高僧は破戒して怨霊となり、姫は権助によって女郎屋に売られるという、複雑怪奇かつアウトローな世界観が魅力です。
なぜ今回の上演が特別なのか
まずは今回の上演がいかに特別なものなのかお伝えしたく、孝夫時代の仁左衛門さんと玉三郎さんを応援するために結成された私設団体「T&T応援団」をご紹介いたします。T&T応援団の方々の圧倒的行動力のおかげで2021年の我々も素晴らしい桜姫東文章を拝見できるのだと言っても過言ではないと思います…感謝の思いでいっぱいです。
ざっくりとしたあらすじ
「下の巻」の冒頭でもこれまでのおさらいがありますが、四月に上演されていた「上の巻」までのざっくりとしたあらすじでをご紹介します。今回の上演では少し演出が違う部分などありますが何卒ご容赦願います。
清玄桜姫物の世界
桜姫東文章の題材となっている「清玄桜姫」の世界についてお話したのがこちらの回です。この素材を使って、南北独自の工夫が随所に施されています。
堕ちていく清玄
下の巻の清玄は、上の巻での高僧の面影もなく、堕落しきってぼろぼろになってしまいます。桜姫のことをかつて契った稚児・白菊丸の生まれ変わりと思い込むからこその哀れな末路です。
元ネタのひとつである江の島稚児ヶ淵の伝説や、江戸時代の女犯僧などについて調べてみたのがこちらの回です。演目が生まれた時代の世間の混沌ぶりを、少しですが伺い知ることができるかと思います。